鉱物が宝石に!?いえいえ、絵の具のもとなのです!

先日、美術の先生方が集う『日本画普及部会』へ参加してきました。
教えて下さったのは日本国内で岩絵の具に関する研究の第一人者と言われる、橋本弘安先生。
ナノレベルまで突き詰める顔料の粉砕技術の追及、現代日本画の話に感銘を受けました。
良い話を聞くと、生徒さん達に伝えたくなりますね。大変勉強になります。

今回は『岩絵の具』の作り方でした。
日本画は産業革命で開発された西洋のチューブ絵の具のような際立った変化はなく
今でも顔料の為に岩を砕き、膠(にかわ)を煮詰めて制作します。

西洋では19世紀の初頭に『チューブの絵の具』が開発されました。
それまでの古典絵画の時代『絵の具』は徒弟制度によって各絵画の工房で少しづつ調合して作られておりましたが
1800年代、工場で生産されるようになると市場に大量に出回るようになったのです。
また、それまでの絵の具は不純物が多く、色がくすみがちでしたが
工場で純度の高い絵の具を生成できるようになり、飛躍的に発色の良さも向上したのです。
そして50年後・・・その豊かな色彩の『チューブ絵の具』を使って印象派が生まれました。
産業革命によって、写実主義的な絵画が写真に取って変わられた時代。
そんな中で印象派の活躍は絵画の有意性を世に知らしめたと言われてますが、それもまた
19世紀だからこそ成し得た・・・量産される「彩度の高い絵の具」によって生み出された産物だったという訳です。

私たちはチューブ入りの絵の具を何も考えずに買います。
その中身は化学薬品の調合の産物です。青、赤、黄色・・・国際的な基準はなく各製造メーカーの裁量で決まってしまうのが現状です。なので会社が違えば、また海外に行くと絵の具の色が異なるのです。材料は大体同じところから仕入れているので配合の違いが主ですが。
中身を何も知らないで買うというのは、スーパーで肉や魚の切り身、加工食品を購入するのと一緒なのかも知れません。

今回は青の原料である「ラピスラズリ」を砕いて絵の具にしました。
かの有名なフェルメールの絵画で使われた顔料としても「ラピスラズリ」は有名ですね。
とても貴重な画材なので絵を描くのも緊張します;
宝石を砕いて顔料にしたことで、絵の具がキラキラ・・・!
光に反射すると輝くのでとても綺麗。ため息がでます。
そして既存のチューブ絵の具にはない、自分で色彩を調合する手ごたえをダイレクトに感じる事が出来ました!

教室の生徒さんたちへも日本古来の「日本画」の素晴らしさと「岩絵の具で描く」面白さを
お教えしたいと思っています。

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