風は冷たいですが晴天が続いていますね。
週末は日本画の研究会へ。美術大学の電子光学系顕微鏡を使って絵の具の粒子を観察してきました。
作品を分析機にかけると、使用した画材の元素が周期表ライト表示され、成分や割合も判ります。
絵の具を化学式で考える先生もおられるそうです。
やはり突き詰めるとそうなる面もあるわけで絵を描く以外も日々学習だなぁと思います。

上の画像は4分の1ミリ。日本画で使用されているラピスラズリの顔料です。
細かくても宝石のようにキラキラと輝いていますね。
同じ倍率で観る群青のアズライトより薄く、青以外の成分も多く確認出来ました。
この写真の様にラピスラズリは黄鉄鉱や方解石が入っているために青色がくすみがちです。
原料の多くはアフガニスタンで採掘されます。
天然顔料なので純度の違いが石によって異なりますが色の異なる黄鉄鉱と方解石を除去し、青色の天藍石のみを抽出すると煌めくような顔料になります。

日本画ではありませんが17世紀に活躍したヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)が使用したラピスラズリは高純度の材料だろう、という話になりました。
活躍した時代はオランダの貿易経済が発展しており、豊かな妻の実家に加えパロトンだったと言われる実業家ピーテル・クラースゾーン・ファン・ライフェンのバックアップがあったからこそ傑作を送り出せたのだと言えるでしょう。

フェルメールの作品の画面は平面的であまり凹凸は感じられません。
対して同じラピスラズリを使用しても日本画はザラっとしています。
これは鉱物の粒子サイズを作品表現に合わせて変えているからなのです。

自然の鉱物をより身近に感じながら生み出される作品はどこか暖かく、爽やかな雰囲気を纏っています。
それは油彩にはない魅力のひとつです。

こうした顔料を使用し、ドイツの大学で日本画の授業が行われるなど日本国内に留まらない試みが始まっています。
基本的に支持体に和紙・板・絵絹を使いますが、ドイツでは全く驚く様な素材にペイントしたとか!

ボーダーレスな世の中で美術教育も新たな局面を迎えています。
こうした先端技術を駆使し、他の国の方が使う事でどんな作品を生み出されるのか・・・・未来が楽しみになりました。